- 1 白磁 2004/03/28(Sun) 23:36
- はじめまして。白磁と申します。
当て字は立花慶汰、知場涼坪で風小説を書かせていただきます。
子犬だと思ってかわいがっていたら、 それは大型犬の子犬だった。
小さな衣擦れの音が静かな部屋に響く。 閉めたはずのカーテンの隙間から月が覗いている。銀の光のラインで二人を分かとうとするが、効きはしない。 月との距離は遥かに遠く、二人の距離はあまりに近い。 「こんなに大きくなっちゃって」 昔のかわいかった姿を思い出そうと横たわった慶汰の背に腕を回しても、広いばかりでその欠片さえ残っていない。伝わってくる汗で濡れた素肌の感触といつもより高い体温が昔の姿をますます遠くさせた。 「かわいかったのになぁ」 文句なのか、嘆きなのかわからない言葉を漏らしてばかりの涼坪を慶汰は長い腕を伸ばして抱きしめ、昔の自分から引き剥がす。 「涼坪くんを守れるようになったんだよ」 小さかった手も足も背も、大事な人を包みこめるくらいに大きくなった。 つい先ほどまで貪っていた唇で優しく囁くが、いわれた本人は首筋に頭をおいて硬くなったままだ。納得してないらしい。 「別に誰からも狙われてないし、自分の身ぐらい守れる」 そういって離れようとしたので、涼坪の手首を掴んでベッドに押し倒した。シーツの波がまた揺れる。 「これでも守れるの?」 この目は昔から変わらない。 まっすぐに見つめられると、胸の奥が揺れる。 この小さい揺れはいつか抑えられなくなるのではないかと恐怖を感じ始めたのはいつ頃からだろうか。 くちづけで伏せられた目に安堵しながら、柔らかな舌に答えた。 触れられたところから熱くなる。それは慶汰も同じだ。触れているのはオレなんだから。 早くなる心音が耳に痛い。理性が消えるカウントダウンに聞こえた。
子犬だと思ってかわいがっていたら、 今はオレがかわいがられている。 (方式:短編) (この小説は無断リンク禁止モードがonに設定されました。)
-
634 白磁 2008/12/03(Wed) 22:29
- 『君を中心に世界は回る』
信号待ちをしている車の窓から見えた街路樹の紅葉で今が秋も終わりなのだと気づく。 四季の移ろいがわかりにくい都会での、ほんのわずかな季節のシグナル。 歩道橋の下、穏やだったエンジン音が信号の色が変わったと同時に一気に上がる。 俺達の車が走って起こった風に歩道の花水木が揺れ、赤い葉が一枚舞い上がる。 葉はキンと冷えた夜気に驚いたように高く跳ねてから、さっきまで車が停まっていた場所に落ちた。 俺は送迎の車の定位置、後部座席の窓側に座って、窓の向こうを流れる夜景をぼんやりと眺めて左の頬の裏にできた口内炎を舌の先で舐めていた。 粘膜の内側はかすかに血の味がする。口内炎の形をなぞると、俺の頬がぷくりと膨らんだ。 その頬の一番高いところを隣に座る慶汰が撫でた。 「痛い、痛い」
省略されました全文を見る
-
635 名無しさん 2008/12/04(Thu) 09:05
- 白磁さん!もう尊敬してしまいます。
某音楽番組の例のやりとりを聞いて頭の中をいろんな妄想がうずまいてました。 慶汰涼坪2人ともらしいな〜と思ってましたがお互いだとどうなるんだろう?と。
ステキです。口内炎のくだりも甘くてとても好きです。更新ありがとうございます。
-
636 白磁 2008/12/07(Sun) 19:32
- >>635 名無しさん
尊敬だなんて、そんな。照れてしまいます。 今回は「手を繋いで〜」のところを書いてみたいと思ってできた話です。 三歩後ろだったら、手を繋ごうとしてもかなり無理な体勢になってしまうので。 感想、ありがとうございました。
-
637 白磁 2008/12/23(Tue) 11:45
- ある曲と同名の部分は/を入れています。
『unripe』
まだろくに世間を知らない十代の男達が住んでいれば、もめ事は毎日のように起こる。 その頃は血気も盛んで、体力も余り、大人に反発心も持ってるものだから、制止を聞かずに狭い世界を走り回る。 壁にぶつかればふて腐れ、人にぶつかれば即ケンカ。並走する人もいるけれど、相手の気持ちなんか考えやしない。 ペースも乱すし、言葉の裏の本心なんて読みやしない。 そういう時期。今思えば未熟で恥ずかしくもあるけれど、うらやましくもある一瞬の時だ。 その日はいつになく龍壱が慶汰に食いついていた。一階なのをいいことに、階下の住人を気にせず、龍壱が強く床を蹴る。 龍壱の後ろ、共用スペースの壁に立てかけるように山になっていた雑誌が崩れた。ケンカの原因は龍壱の散らかし癖。
省略されました全文を見る
-
638 白磁 2008/12/23(Tue) 12:22
- 規制ワードにひっかかるので小分けになります。
『unripe2』
クリスマスのこの時期、このソファに座ってこの騒がしさに耳を傾けるのはあと何年続くのだろう。
-
639 白磁 2008/12/23(Tue) 12:55
- 『unripe3』
体は成長しても慶汰は酒が飲めない。クリスマスにみんなが集まる会場を提供した部屋の主はシラフで客人の相手をしている。 客の一人が慶汰の肩を叩く。 その手は撫でるようで、下心を感じる。慶汰は笑ってやりすごしていた。
-
640 白磁 2008/12/23(Tue) 12:56
- 『unripe4』
俺は勧められたロゼのスパークリングワインをちびちび飲みながら、よくあるクリスマスの光景を眺める。 やっぱり、慶汰は抜きん出て目立つ。垢抜けているというか、洗練されているというか。内側から光って見えるので、LEDいらず。 外に置いておけば、暗い中でも人は慶汰を目印にして集まるだろう。 恋人がかっこいいのは嬉しいが、その分ライバルは集まり、誘惑も多くなる。嬉しいけど、悩ましい。由々しき問題だ。 告白されたのは俺なんだぞとグラス越しに慶汰を見たら、グラスの中の赤く色を塗り替えられた慶汰が振り返った。 「もう眠くなった?」 「平気」 慶汰は俺の脇に座って、気の抜けた笑顔を見せる。さっきの酔っぱらいには笑顔を作るという感じだったので、自然な顔が嬉しかった。 「あのさ、今日は最後までいてね?」
省略されました全文を見る
-
|